伊藤伸平合衆国滞在始末
Part 1

シアトル編


 まだアメリカにいる、ワケではない。’99年秋に当HPに載っけた旅行記の続きをようやく書きはじめたというコトです。
当時の記憶も薄れ、旅先で残した簡単なメモを頼りに書き綴っていくので、途中記述が飛んだりするところもあるか知れないけど、まあ、ナンとかなるんじゃないかと思う。っつーかします、ナンとか。幸いシアトルでは3日めから一本木蛮夫妻とおだぎみをが合流しているので、彼らにも確認をとりつつできる限り当時の状況をお伝えしたい。
 しかしまさかこのあとシアトルが、反WTOのデモ隊と警官隊との衝突で催涙ガスのけぶる戒厳状態に突入するとか、大魔神佐々木がマリナーズで投げるとか、夢にも思わなんだよなー。


9月27日 月曜日

 飛行機ばっかり乗ってて窓の外を見るのも飽きた。っつーかナンで右側の窓際ばかり座らされるのか。そら俺は窓の外を見るのは好きだ。でももう往きの飛行機で13時間雲を眺めて景色はすっっっかり堪能した。ああ堪能したともさ。もういいよまン中の席で、また外見ちゃうじゃねえかよ、でもああ、雲っていつまで見てても飽きないよな〜…いてて、首痛いクビ。ワケのわからぬわがままを心ン中で呟きふて寝をしているうちに、何故かちゃんとソルト・レイク・シティーでの乗り換えもすまし、俺はシアトルに到着した。ここでは29日に一本木蛮夫妻らと合流するまで、蛮ちゃんの従姉、紀子フリッチュル夫妻宅のそばにモテルをとって滞在する予定だ。
紀子さんは保母の勉強をしに渡米してそのまま結婚し、教育用コンピュータソフトの仕事から転じて今はマイクロソフト社に勤めている。マイクロソフトったらあのマイクロソフトだ。この時点ではビル・ゲイツもまさかマイクロソフトが独禁法違反で会社分割の危機に見舞われるとか思ってなかったろうなー。俺は思ってなかったよ。

 さて、空港にはすでに紀子さんが待っていた。紀子さんは蛮ちゃんから俺が先に行くことを聞いてすぐ、このHPをチェックしてくれてたので俺の顔はすぐわかったそうだ。
俺は蛮ちゃんから「ノリちゃんってこンな人」ってハナシを聞かされていただけだった。「“一本木家の顔”してる」って言われても何のコトかと思ったけど、会ってみてわかった。どことなく蛮ちゃんの面影がある。コレかっ。コレが“一本木家の顔”なのかっ。髪、金髪じゃないじゃんっとかメチャ失礼なコトを考える。あまつさえ、ちょこっとハナシ振ってみたりする。

「蛮ちゃんの従姉なのに髪、黒いっすね。」
「アレはとんでもないですよねー。」

 そうか、やっぱり蛮ちゃんのレインボウ・ヘアは一本木一族のあいだでモンダイ視されていたのか。わはは。
 紀子さんのクルマでモテルまで送ってもらう。ハイウェイの途中所々で小動物の死骸を見かける。デンヴァ−でもそうだったが、アメリカの都市には緑の量が日本のそれとはけた違いに豊かだ。飛行機の上から見るとよくわかるが、広大な大陸の自然を取り込んで、人間の力で従わせた国、なのだ。それだけに時々こういう軋轢が、人間と自然とのあいだに生まれたりする。ま自然がいつも弱者とは限らないんだけど。ワニ、いるしなー、アメリカ。

「あれ日本語ではなんていう動物なのかわからないけどよく轢かれてるんですよ。」 と、紀子さん。

「オポッサムですね。」

 動物図鑑で見たことがある、アライグマに似たやつだ。こんな変わり果てた姿の実物にお目にかかるとは、当時小学生の俺想像だにしなかったよ。クルマはやがて小高い丘の上の瀟洒なモテルへ。チェック・インを手伝ってくれたあと、紀子さんは会社へ戻る。仕事を抜けて迎えに来てくれたのだ。ありがとうございます。

 デンヴァーでのホテルの部屋は禁煙だったが、ここは喫煙可。と、灰皿がない。再びフロントへ行って灰皿をもらう。デンヴァーでは5日間で2箱しか喫わなかった。さてどうなるか。 一服してホテルの部屋からスティーヴに無事到着したことを報せに電話する。あとでわかったが、この時彼はもうデンヴァーのホテルを発ったあとだった。しかしどういうワケかホテルのフロントが部屋まで取次いでくれたので、留守電にメッセージを残す。いづれにせよモテルの名前を間違えて残してしまった。

 丘の下のモールへ買い出しに。6車線の道路をはさんで3つの巨大なショッピング・モールとスーパー・マーケット、映画館にレストランなどが立ち並び、明らかに住民全員の致死量を越えた食料品が店頭に並んでいる。にぎやかそうに聞こえるかも知れないが、スケールがでかすぎてけっこうな人入りなのに閑散として見える。なんかマチガってるぞアメリカ。こんなン見てるだけで仕合わせな気持ちになってくるではないか。全部食いてぇっ。全種類食いてぇよう! テロも貧困も銃も麻薬もどーでもよくなってひたすらいろんな食い物に目移りしてしまうでわないですかっ!
 ささやかにお弁当と水とコーヒー豆とV8野菜ジュースを買ってモテルの部屋に帰る。
ぐわっっ! モテルは坂の上だったでわないかっっ!! 水とV8はそれぞれ1升瓶くらいある。計3キロ超だ。マチガってるぞアメリカっっ、あ? マチガってるのは俺の買い物の仕方け? そうなのけ? しかも、“コッチじゃさぁー水は買うってのジョーシキだよねー”とかスカして買ったミネラル・ウォーター、でもシアトルって全米で数少ない「水道水の飲める街」なんだとさ。ゆってくんなきゃあーっ! きいっ。重い、重いよう。ステファニーのくれた全高10cmはあろうかというカウ・ボーイが馬に乗った格好をしたチョコレートの彫り物をかじってるうちに猛烈な眠気が襲ってきた。前日の寝不足もあって7時頃にダウン。寝る。


オートバックスのウィンドウィッシャー液売り場。ではない。
色とりどりのゲ−タレードだ。
なんでスポーツドリンクがこんなに“青”かったり“赤”かったりする必要があるのか。
シアトルに限らずアメリカのスーパーには極彩色の食い物が溢れかえってて戦慄する。
これはケーキ。
FDA(アメリカ食品医薬品局)の審査ってキビシいんだかユルいんだかよくワカらんよなー。
アイスの容器は子供が砂場で使うバケツくらいある。
これで1ドル99セント、200円ちょっとか。そら第三世界もテロ仕掛るわなあ。

9月28日 火曜日

 7時半頃起床。朝のタバコがうまい。うまいよう。ぼうっとしてるとだんだん腹が減ってきたので前日買ったテリヤキチキンとサラダのお弁当を食べる。このモテルはコンドミニアム形式で、キッチンに冷蔵庫、ひととおりの食器類に備え付けの電子レンジまでついている。なんだかここン家の子になりたいくらいの豪華快適ワンルームだ。備え付けのコーヒーメーカーに前日買ったペーパーフィルタとコーヒー豆をセットして朝食。9時頃から食べだして、終わるのに10時までかかった。多いよっ。

 旅も2週めになると着るものがなくなってくるのだ。常に見通しのアマい俺は、小っちゃめの旅行鞄しか持っていない。
タバコをふかしてシャワーと洗濯。何故かウンコに葉っぱが混じっていた。

2時頃買い物に行く。っつーかショッピング・モールの探検だ。蛮ちゃんの好きな爬虫類充実のペットショップにスターバックスコーヒー、GMCという大手ヴァイタミンショップの直営店も発見、大漁大漁と喜んでるうちに日もとっぷりと暮れ、晩のおかずを買って帰る。食い物屋もたくさんあるのだが、片言の会話力で知らない土地のレストランに入るのはどうも億劫だったし、とにかくスーパーに並んだ大量の食品に目を奪われついついうまそうなお惣菜から手をつけてしまうのだ。
あと俺はチップの計算がどうも苦手でもある。中華お惣菜屋で焼飯となんとかいうチキン料理、それに酸辛湯を買う。これもうまかった。
アメリカの食い物のいい評判をあまり聞かないが、俺は貧乏人の倅なので出されたものは何でもうまいうまいと言って残さづ食べるのだ。


[Pert 2]